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●順番おかしくないか?

last update Last Updated: 2025-04-10 18:31:50

……どうしよう、嫌な予感しかしない。

ケイロの不穏な発言に内心冷や汗をかいていると――にゅるり。生温かくて粘ついた何かが尻の割れ目に貼り付き、俺の中へと入っていく。

「な……?! うぁ……ナカ……ひっ……動いて……やだぁぁ……!」

ワケの分からないものが体の中で蠢いて、思わず俺はシーツを掴む。

ぐりゅん、ぐりゅん、と円を描くように動きながら、奥へ、奥へと進んでいく感触。怖くて仕方ないのに体は激しく疼いて、俺の心と裏腹にびくんっ、と全身が甘く跳ねる。

もう意地もプライドもあったもんじゃない。

俺はケイロの腕に指をかけ、か弱く掻きながら訴えた。

「これ、ヤダぁ……やめろよ、変なもん入れるの……頼むからぁ……っ」

「そう怖がるな。水の魔法で中を洗っているだけだ」

「あ、洗って? そ、それだけ……ぁあ……ッ」

「ついでに潤滑剤の効果も付与してある。潤いは十分か、確かめてやろう」

悪戯な笑みを浮かべながらケイロは俺の中へ指を捻じ込んでくる。

指先で入り口を軽く揉まれ、ぬちゃ、と粘った音が聞こえる。

それが耳に入ってくるだけで恥ずかしくて死にそうだ。でも気持ち良くて、ずぶずぶと沈んでいく指がたまらない。

「あ、ぁ……ン……はぁ……ぅぅん……」

「指だけでも気持ち良さそうだな。中も十分に柔らかい……なんだかんだ言いながら、やっぱり悦んで俺を受け入れる体になってくれたな」

言いながらあっさりと指を引き抜き、ケイロが自分の服を抜き出す。

細身の割に筋肉がついた、しなやかな体が現れて思わず俺は見入っ
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    つ、ついに来た!  いつかあるんじゃないかって思ってた、変人確定案件!みんなが見ている中で襲撃されて、必死に戦うほどに変人扱いされていく――命のやり取りしているだけなのに、なんて理不尽なんだ。しかも苦戦してるっぽい。「アイツ……っ!」思わず俺は美術室を飛び出し、勢いよく階段を下りていく。魔法も何も使えない俺が行っても、戦力にはならないかもしれない。 でも、こっちの人間でありながら、ケイロたちの現状を見られる俺だからこそできることもある。一階に着くと俺は廊下の窓を開け、そこからジャンプして中庭へと移動した。さっきまで使っていたホウキの柄を、しっかりと握り締めながら――。「このっ、覚悟しやがれ!」俺は両手でホウキを持ち、思いっきりバットを振り抜くようにして漆黒の獣たちにブチ当てる。てっきり効かないと思ったが、振り抜く間際にホウキにが光り、キャウン、と意外に可愛い声を出しながらダメージを受けていた。どうやらケイロが何かしたらしい。そして、その勢いのままケイロにホウキを迫らせる。 もちろん本気で当てる気はない。剣とかち合わさる所で寸止めし、小声で話しかけた。「いったい何があった? スゲー目立ってるぞ」「校舎の外を調べていたら襲われた。シャドウウルフ五十匹……数が多すぎて戦闘が長引いてしまった」「マジかよ……コイツら、魔法で一気にボンッと倒せないのか?」「魔力不足だ。かろうじて物に精霊の力を宿す程度しかない」話している途中に黒い狼が俺たちに飛びかかってきて、ケイロが剣の切っ先で斬り付け、後退させる。コイツら、直接攻撃しかできないってことか――じゃあ好都合だ。俺はニッと歯を覗かせ、ふてぶてしく見えるように笑った。「よし。じゃあ今からケンカごっこするぞ、ケイロ」「な、んだと……?」「俺とお前は、今からここで悪ふざけで大ゲンカするフリして派手に立ち回る。そうすれば、そこの黒わんこを倒しながら変人に見られるのは避けられる」

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    ◇◇◇キスでイかされた上に、もう俺の体がケイロに逆らえなくなっている現実。かなりショックだった。信じたくない現状を突きつけられたせいで、午後の授業はまったく頭に入ってこなかった。ノート取るフリして、大昔のボクシング漫画にあったような真っ白燃え尽き状態で、俺は呆然とし続ける。なんかケイロの言う通り、俺、アイツの嫁化が進んでないか?脅されたとはいえ、真面目にまともな愛妻弁当作ってるし、危ない目に遭わなきゃいいなって心配してるし……アイツに理不尽な目に遭わされて、腹が立ってるハズのに。たぶん、あれだ。気持ち良すぎるのがダメなんだ。魔法で感じる体にされたら、嫌悪感なんか吹っ飛ぶ。何されてもよがって、「もっと……」なんてせがんじゃうし。しかも成り行きで仕方なしなハズなのに、ケイロがスゲー嬉しそうに俺を抱いてくる。特に俺が強請ると、あの無愛想な美人ヅラが緩むんだ。そして気絶するまで何度もイかせてくるんだ。……絆されかけている自覚はある。まったく……なんなんだよアイツ?どうして好きでもない男を嫁にして、喜んで抱けるんだよ?王子様だから、一般庶民で異世界の住民な俺が物珍しいから遊んでいるんだろうな。うん。珍獣の反応を面白がって、自由に遊べない鬱憤を晴らしているに違いない。……でも、その割には抱いてる時の目が優しいんだよなあ。普段は小馬鹿にした感じで見てくるクセに。アイツ、本当は俺のこと、どう思ってんだ? 知りたいけど、聞くのが怖ぇ。実は物好きで溺愛してますっていうのも嫌だし、愉快なオモチャに思われているって確定するのも嫌だ。ああ、考えるだけ不毛な底なし沼にハマっていく。今日最後の授業が終わる頃には俺の心の体力は空っぽで、生きる屍と化して机に突っ伏すしかなかった。こんな情けない姿、ケイロに見られなくて良かった。マジで。

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   不意に近寄られて

    ◇◇◇昼食を終えて「ちょっとトイレ」と席を立った俺は、ようやくケイロの気配がない場所へ行けて心からホッと胸を撫で下ろした。教室から敢えて遠い所にある、人気のない三階の視聴覚室近くのトイレ。辺りの静けさに癒しを覚えるのは初めてかもしれない。ああ、トイレっていいな……解放感がハンパない。出すもの出して体もスッキリした後、いつになく爽快な気分で手を洗っていると、「……太智」「ふわぁぁぁぁ……ッ!」突然耳元でケイロの声がして、俺は思わず腑抜けた声で叫びながら耳を押さえ、慌てて振り向く。すると視界一面にケイロの顔が広がって、俺の体から一気に力が抜けた。危うく尻もちをつきそうになったが、グッと抱きかかえられて無様な転倒は回避できた――その代償は余計にひどかった。「ば、バカ……っ、学校で、近づくなってぇ……ン……ッ」「離れる前に一言伝えておこうと思ってな……午後の授業、抜けさせてもらうぞ」こ、声が耳に響いて……ヤバい。これだけで腰が砕けて、体の中がイカれていく。どうにかしてくれ、と泣いて縋りそうになるのを堪えながら、オレはケイロに尋ねる。「……っ……なに、か……あったのか……?」「ここしばらく裏切り者からの動きがない。だから俺が陽動してやろうと思ってな」「そっか……ッ……まあ、気をつけろよ……」「心配してくれるのか? 俺の妻が板についてきたんじゃないか?」……は?体の疼きを必死に堪えている中、耳を疑うことを言われて俺は思わず

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